ブラスロックの音色に、強靭なステップを。MOS・Miyuが「都市型大規模マラソン」で魅せる、アーティストの新たな挑戦 with 福田りえ
冬の澄んだ空気がビル群の間を吹き抜ける、東京・丸の内。
この街のランニング拠点である「ASICS RUN TOKYO MARUNOUCHI」に、一際目を引く存在感で現れたのは、管楽器ガールズユニット「MOS(モス)」のトランペット担当、Miyuさんだ。
世界をステージに、力強い吹奏とダンスを融合させたパフォーマンスで人々を魅了する彼女。そんな「表現者」としての彼女がいま、人生最大の未知なる領域へ足を踏み入れようとしている。3月に開催される「都市型大規模マラソン」での42.195km完走という挑戦だ。
その傍らで伴走するのは、市民ランナーとして確かな実力を持ち、アシックスのランニングナビゲーターとして本企画のサポートを担う福田りえさん。二人はこの数ヶ月、練習を共にし、時にはダジャレ(?)を交えながら、本番へのロードマップを描いてきた。
今回は、最終調整に密着。練習後のカフェで、アーティストとして、そして一人のランナーとして、この挑戦の裏側にある物語をたっぷりと語ってもらった。

1. 管楽器奏者の「心肺」と、ランナーの「脚」のギャップ
――Miyuさん、まずは今回フルマラソンに挑戦しようと思った背景を教えてください。
Miyu: MOSは常に「挑戦」を旗印に活動しているバンドです。でも、正直なところフルマラソンは私にとって未知すぎて、「自分にできるわけがない」という気持ちがどこかにありました。でも、小学校の頃から吹奏楽部でトランペットを吹いてきて、肺活量には自信があったんです。中学時代の持久走でも、吹奏楽部の子たちは意外と速かったりして。
福田: 確かに!管楽器を吹く人は腹式呼吸が完璧ですから、心肺機能のベースが一般の方とは全然違いますよね。

Miyu: そうなんです。だから「音楽とランニングの親和性を証明できたら、同じ楽器を吹く人たちにも勇気を与えられるんじゃないか」と思って、このお話を頂いた時に「やるしかない!」と決めました。
福田: 実際、一緒に走っていてもMiyuさんのスタミナには驚かされます。ライブで2〜3時間、踊りながら吹き続けるあのエネルギーは、まさにアスリートそのものですから。
Miyu: ありがとうございます(笑)。でも、いざ本格的に走り始めたら、完全に自分のキャパシティを見誤っていました。心肺は全然苦しくないのに、筋肉や関節がそのスピードについていけなくて……。

2. 「ケニア人の真似」から始まった絶望、そして救いのAI
――練習を始めて3週間ほどで、膝を痛めてしまったとお聞きしました。当時はどんな状況だったんですか?
Miyu:最初は知識がなさすぎて、テレビで見たケニア人選手のフォームを真似して走っていたんです。「腕を振らずに、スーッと進むのがカッコいい!速く走れるコツなのかな?」って(笑)それを真似て、自分のキャパもしらずに飛ばして練習してしまいました。そうしているうちに、階段を降りるのも痛い、歩くのも辛いという状態になって。
福田: 土台がないまま、トップ選手のイメージだけで動いてしまったんですね。
Miyu: はい……。ライブツアーも控えているのに「本当に当日走れるのかな」って、毎日が絶望でした。不安すぎて、夜な夜なChatGPTに「膝がこういう状態なんだけど、大丈夫かな?」って打ち込んでは相談していましたね。

福田: まさかのAIコーチ(笑)。どんなアドバイスをくれたんですか?
Miyu: AIは、「休むことも前進だよ」って励ましてくれていました(笑)その言葉で何とか落ち着かせていました。その後、福田さんやアシックスのプログラムで、足全体で着地することや、腕の振りが脚を動かす助けになることを論理的に教わって、ようやく自分の走り方が分かってきました。
福田: 楽器と同じですよね。基本のフォームが崩れていると、良い音は出ない。アドバイスさせてもらった後、あんなにバタバタしていた足音が、少しずつ静かに、そして跳ねるようになってきました。私のダジャレに対しても、最近は少し時間差で「あ、今のダジャレだったんですね!」と気づいて笑ってくれる余裕が出てきましたし(笑)。
Miyu: 余裕というか、福田さんのダジャレが高度すぎて、いつも脳トレ状態なんです(笑)。でも、そうやってリラックスさせてくれたおかげで、「NOVABLAST 5(ノヴァブラスト 5)」のバネを利用して、身体が勝手に前に進む感覚を楽しめるようになりました。練習でもこの一足を履き込んでいて、本番もこの限定カラーで走るのが楽しみです。

3.表現者として。42.195kmの先に見える「パズルのピース」
――多忙なツアーの合間を縫っての練習は、かなり過酷だったのではないでしょうか?
Miyu: 正直、スケジュールはかなりタイトです。今週も東北の方でライブがあって、その数日後に本番。でも、一度故障を経験して「走れる喜び」を知ったことが大きかったです。
福田: 膝を痛めた期間があったからこそ、「無理をしないランニング」のコツを掴みましたよね。
Miyu: 以前、レコーディングで思うように吹けずに泣いたとき、あるアーティストの方から「それはパズルのピースが増えたということやから」と言われたんです。今回の膝の痛みも、初めて体験した練習不足への不安も、すべては完走というパズルを完成させるための大事なピース。そう思えるようになりました。

――本番、東京の街をどう駆け抜けたいですか?
Miyu: 42.195kmの先にある景色はまだ想像もつきません。でも、沿道で誰かが「Miyu!」って呼んでくれたら、1km5分台で突っ込んじゃうかもしれない(笑)。
福田: それはペース配分に気をつけて!(笑) でも、そのアドレナリンを力に変えられるのがMiyuさんの魅力です。
Miyu: 当日は、MOSのメンバーのLottaも一緒に走ります。一人じゃない心強さと、沿道の応援を味方にして、自分にしか出せないリズムを刻みながら、東京の街を楽しんできます!

スタッフクレジット
取材・文・編集/編集部(トレイル) 撮影/編集部(トレイル)


