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R.M Monthly Authentics:初めてでも間違いないランニングシューズ選び。番外トレラン《HOKA スピードゴート 7》 前編

大田原透

風爽やか、心地よく走るにはもってこい! せっかくだから、トレイルランにもトライしたくなる、新緑の季節♪ ということで、普段はロード用のランニングシューズを中心にお届けする「R.M」の本連載の、春の番外編。今回は“コレさえ選べば、間違いなし”のトレランシューズを探す企画に衣替えしよう。

今回のフォーカスは、フレンチアルプス生まれの〈HOKA(ホカ)〉。東京・丸の内の直営店でお話を伺ったのは、〈HOKA〉の契約アスリートで、日本を代表するプロウルトラトレイルランナーの宮﨑喜美乃選手。ホンモノの“ガチ”アスリートに、我々ビギナー向けのシューズ選びのポイントを指南いただくことになった。

宮﨑選手が推すのは、《スピードゴート 7》。さまざまな種類のトレランシューズを展開する〈HOKA〉のなかでも、あらゆるサーフェイス(路面)に対応する、超~汎用モデルの最新機種である。名前のスピードゴートを直訳すれば“俊足の山羊”。

ちなみにGOATを大文字表記すると、ご存知“The greatest of all time.=超~最高”となるのだが、正確にはウルトラランニング界のレジェンド、カール・メルツァーのニックネームに由来するのだとか……。

今回取材対応してくれたのは〈HOKA〉の契約アスリートにして、ヨーロッパで開催される「UTMB」本戦で頂点を目指す、日本を代表するプロウルトラトレイルランナーの宮﨑喜美乃選手。

初心者も、トップ選手も、シューズを選ぶ際の基本は“フィット感”。

「不安定なトレイルを走るシューズは、どこで接地しても安心できるフィット感が大切です。このフィット感は、トップの選手も、初心者も違いはありません。シューズに足を入れた時に、かかと、横幅、つま先のフィット感を確認してください」(宮﨑選手)

なるほどトレイルランニングは、ロードのような直線的な動きだけではない。傾斜のキツイ上りや下り、岩場や泥、倒木を跨いだり、沢を渡渉するなど、さまざまな動きが求められる。宮﨑選手が指摘するように、さまざまな動きでも、サーフェイスを捉えて安定して走り続けるフィット感がとりわけ重要になる。

フィット感と同様に重要なのは、グリップ。蹴り出しの際に、きちんとサーフェイスを捉えるのはもちろん、かかとでブレーキをかけた際も含めて、グリップはトレランシューズの性能の“カナメ”となる。

“曲がる感覚”のシューズ。 

「出場するレースによって、岩場が多かったり、土が多かったりするので、私はレースに応じて数種類のシューズを履き分けています。さまざまな種類の〈HOKA〉のトレランシューズの中で、いちばん安心して使っているのが《スピードゴート 7》です」(宮﨑選手)

宮﨑選手が薦める《スピードゴート 7》は、“曲がる感覚”が得られるシューズだという。ソール(靴裏)に貼られたアウトソール(黒の部材)は1枚の部材にもかかわらず、かかとのグリップと前足部の蹴り出しが、“曲がる感覚”でサーフェイスを捉えているという。

「《スピードゴート 7》は、かかとでの接地からブレーキ、蹴り出しまでの動きがスムーズにつながる、曲がるような感覚が得られるのが特徴です。つま先だけで登っていくようなシーンでも、硬い岩場でも滑らず、ソール全面で岩肌を捉えられます」(宮﨑選手)

「長い距離のレースでは、スピードを出せるセクションで、どれだけ速く走れるかに懸かっています。そのためにも、かかとと蹴り出しが連携する“曲がる感覚”が欠かせません。《スピードゴート 7》は、スピードを出せるセクションで、さまざまなサーフェイスに対応してくれます」(宮﨑選手)

宮﨑選手が走る“長い距離のレース”は、160㎞を超える途方もないもの。距離が長くなるほど、気温や天候は変わり、サーフェイスの状態も劇的に変化する。全てに対応できるシューズへの信頼感は、履いて走った選手にしか感じ得ないが、話を聞くだけでも(全てではないが)理解はできる。

前足部もかかと部も、踏み面は広く安定した構造。アウトソールにはヴィブラム®の「メガグリップ」を採用。ラグ高は5㎜。

宮﨑選手の走りを支える《スピードゴート 7》。

ということで、世界のレースに挑み続ける宮﨑選手が《スピードゴート 7》に寄せる信頼感を、(機能面から)ひも解いていきたい。まずは、いかなるサーフェイスをも捉えてグリップするアウトソールから始めよう。

《スピードゴート 7》に使用されているのは、アウトドアシューズのソールの世界ブランドであるVibram(ヴィブラム)®の「メガグリップ」。しかも、ラグ(凸凹)高は5㎜もあり、前足部は推進力を妨げず、かかと部は着地時のグリップを高める配列になっている。

「《スピードゴート 7》の『メガグリップ』は、とても優秀です。上級者は、シューズに応じた(グリップを効かせる)足のつき方を身に付けますが、まだ体得していない初心者でも、グリップがかかる構造になっています。下りで怖がった際もグリップが効きますし、ガンガン行きたいときにもアシストしてくれます」(宮﨑選手)

かかと部の淡いグリーンのループは、ゲイターアタッチメント(後述)。

優れたフィット感をもたらす「ダイナミックヴァンプ」。

着地衝撃を推進力に換える、いわばクルマのエンジンの機能を持つミッドソールには、EVA素材を超臨界技術で発泡させた「スーパークリティカルフォームEVA」を新たに採用。高反発にして軽量、耐久性にも優れており、過酷なトレイルランのレースで性能をいかんなく発揮する。

「かかとのクッション感は、私も気に入っています。硬い岩場でも、躊躇せずに入っていけます。私はビビりなので(笑)、かかとのクッションとグラつかない《スピードゴート 7》のホールドの良さで、下りを怖がらず、楽しく走れています」(宮﨑選手)

足の甲の指の付け根にかけては、特許出願中の「ダイナミックヴァンプ」と呼ばれるフィット感の要となるパーツ。加えて、甲全体を包むアッパーに繋がったガセット構造の広いタンは、泥や小石、小枝などをシューズ内に入らせない。

さらに、別売りのゲイター(砂や泥の侵入防止用の布製カヴァー)を取り付けられるアタッチメントも新たに備え、過酷なコンディション下でのレースにも実戦投入できる。もちろん宮﨑選手からも、「ゲイターアタッチメント」は高評価なのである。

インタビューが行われたのは、東京・丸の内の「HOKA Marunouchi」内の「HOKA ランクラブ」のスペース。今後、宮﨑さんもイベントや講習会を行う予定だとか。

運動生理学を武器に、トレイルを走る。

「海外のトレイルランニングレースでは、トップ女性選手たちの走りを間近で見られます。彼女たちは、どこかで抜かれても、自分の得意なセクションで追いついていく……。トレランは、自分の得意、不得意を知れば知るほど、速く走れるのが面白いです」(宮﨑選手)

宮﨑選手は、低酸素のトレーニング施設でも自分のデータを取りながら、自分の得意を磨き、不得意の克服に取り組んでいる。自分のカラダの感覚と、その時の状態を数値化することを通じて、高いパフォーマンスの再現性を高めることが、成功の近道だと語る。

「私のイチバンの武器は、負けず嫌いの性格ですが、運動生理学も強みです(笑)。自分のカラダの状態を数値にして読み解くので、ダメだったレースでも、良かったレースでも、自分の糧にできますから」(宮﨑選手)

走る科学者でもある宮﨑選手の話を聞くほどに、信頼感を寄せる《スピードゴート 7》を試してみたくなってくる。というコトで、いよいよ《スピードゴート 7》を実際に履いてのフィールドテストに移りたい。

ヨーロッパで開催される世界最高峰のトレランレース、モンブランを一周する「UTMB」本戦で頂点を目指す宮﨑選手。この夏の山行計画もまだ白紙状態の筆者(右)。

《スピードゴート 7》の実力やいかに! 

本連載のインプレは、オンロードのシューズの場合、走る目的に応じた評価を行っている。その目的は、次の3つ。ビギナーを含めた「運動不足の解消」の低速走行、お腹周りの体脂肪を燃やす長時間走に合った「痩せラン」ペース、気分爽快のためのダッシュの「スカッと走」である。

しかし、トレランシューズである《スピードゴート 7》の場合、上記のようなメジャーは当て嵌めにくい。そのため、上りや下り、岩場や沢の渡渉など、トレイルで出くわす各シーンでテストしたい。というところで、紙幅は残念ながら、間もなく尽きてしまう……。

「私が好きなのは、自分が走ることで風を作り、頬で風を感じること。稜線も好きですが、森の中も好きですね。ニュージーランドのレッドウッド(森林公園)のような、何千年もの歴史がある森で、陽に向かって伸びる木々と、その先の空を感じたいです」(宮﨑選手)

宮﨑選手のその気持ちなら、私たちもすぐに追体験できそう。というコトで、宮﨑選手が信頼を寄せる《スピードゴート 7》のインプレの詳細は、後編に譲ることにしたい。引き続きR.Mをお愉みくださいませ~♪

撮影/中田 悟

この記事を書いた人
大田原 透
大田原 透
編集者
フィットネスライフスタイルを提唱する『Tarzan』元編集長。1968年生まれ、身長175㎝、体重68㎏。フルマラソンのベストタイムは3時間36分台という典型的な市民ランナーにして、ウルトラマラソン、トレイルランニング、トレッキング、ロードバイクなど長時間&長距離スポーツをこよなく愛す、走って&試して&書く業界猛者のひとり。
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