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R.M Monthly Authentics:初めてでも間違いないランニングシューズ選び。番外トレラン《HOKA スピードゴート 7》 後編

大田原透

新緑、思わず走り出したくなる季節の到来。若葉の緑をたんまり味わうべく、山や森へ駆け出したい。まさにトレイルランを始める、絶好のタイミングである。ということで、今回のR.Mのマンスリー連載は、番外編。トレランシューズから、初心者にも安心な定番の一足をテストしたい。

今回の注目は、絶好調ブランドの〈HOKA(ホカ)〉。オンロードやファッションで人気の〈HOKA〉だが、故郷は、実はフレンチアルプス。筋金入りのトレランシューズブランドでもあるのだ。本連載の前編では、東京・丸の内の直営店を訪ね、〈HOKA〉の契約アスリートの“ガチ”プロウルトラトレイルランナー宮﨑喜美乃選手に《スピードゴート 7》のお話を伺った。

160㎞を超える過酷なレースでも使用される《スピードゴート 7》は、あらゆるサーフェイス(路面)に対応し、安定した走行を支えるという。その秘密は、アウトソールに使用されている〈Vibram(ヴィブラム)®〉の「メガグリップ」に加え、着地の衝撃を推進力に換える最新ミッドソール素材「スーパークリティカルフォームEVA」が寄与している。

《HOKA スピードゴート 7》 メンズ25~29、30㎝。3色展開。重量275g(片足28㎝)。オフセット(ドロップ)5㎜。ウィメンズ22~25㎝。3色展開。235g(片足25㎝)。23,100円(税込)。

まずは、足入れ&歩く。

しっかりシューレース(靴ひも)を緩め、シューズに足を通し、踏みしめる。〈HOKA〉特有のマシュマロのようなふっかふか感を《スピードゴート 7》に期待すると……、あらっ。ふんわりではなく、“軟らか過ぎない軟らかさ”なのだ。

すっくと立ち上がると、わずかにフワリと沈み込む。おっ、やっぱ〈HOKA〉。アスファルトの路面を歩けば、超臨界発泡EVAのしっとり感。さらに歩いて、トレイルヘッド(入口)からオフロードに踏み出すと、“軟らか過ぎない軟らかさ”になるほど納得。

納得の理由は、安定感。未舗装の林道しかり、根っこや岩だらけの不安定なトレイルでは、“軟らか過ぎ”ては安定しない。落ち葉が積もった、ふっかふかのトレイルで、シューズまでふっかふかだと、むしろ不安定。“軟らか過ぎない軟らかさ”が必要なのだ。

ラグ(アウトソールの凸凹)が路面を捉えるため、多少のロードノイズがあるが、それは安心感の証でもある。トレイルの複雑なサーフェイスに入ってしまえば、ロードノイズは全く気にならない。それでは、走り出そう!

(レースで上位を狙わなければ)トレイルで“ずっと走り続ける”必要はない。走りたいところだけ走れば良いのだ!

まずは、上り。辛いところは歩き、走りたいところだけ走ろう。

「Vibram® メガグリップ」のアウトソールのラグが、バツグンに効く! 土でも岩でも、ドライでもウェットでも、歩いても走っても、路面を噛んで確実に次の一歩を踏み出せる。なるほどの安心感。急な斜面でも、サーフェイスをよくよくグリップするので、(体力が続く限り!)軽快なステップが切れる。

ちなみに、《スピードゴート 7》のかかと部と前足部の高低差(オフセット)は5mm。前足部が低くなるため、わずかに前傾姿勢となる。このわずかな前傾が奏功し、フラットでも緩斜面でも、走りでも、歩きでも、スピードに乗せられる。つまり、楽しい!

ちなみに筆者は、トレランはもちろん、山歩きでもトレランシューズをよく使用する。夏山の1週間程度の縦走でも、テントや食料などの荷物をコンパクトにまとめ、トレランシューズで機動力を確保。安定感があり、路面をしっかりグリップし、軽量275g(片足28㎝)の《スピードゴート 7》なら、今年の夏山で活躍してくれそうだ。

トレラン初心者なら、里山の自然公園などの手近なトレイルに親しもう。信頼できるシューズがあれば、すぐに始められるのだ。

シューズの性能がモロに分かってしまうのが、下り。

撮影とは別日に試走に向かったのは、神奈川県と山梨県の県境に位置する丹沢の西部。15kmにわたるダートの林道をメインに、2つの尾根道と沢沿いのダートをチョイス。尾根道は、いずれも道標がなく、踏み跡も怪しいマイナーなトレイルなので詳しくは記載しないが、2日間総計50km強を《スピードゴート 7》のテストコースとした。

あらゆるサーフェイスに対応な《スピードゴート 7》であれば、これくらいの距離とポテンシャルが必要と踏んだが、大正解。《スピードゴート 7》のソールは、踏み面が広いので、滑落のリスクがない下り坂なら、怯むことなし。ガンガン進める。

安山岩や玄武岩、脆い凝灰岩系の岩場でも問題なくグリップするし、多少の泥、火山の砂礫でもへっちゃら。路面が安定しているダートの下りで、スピード(キロ5分弱)を出しても、《スピードゴート 7》ならイケル。頼もしい限り、ドンドン下れる!

前足部はゆったりと作られているので、窮屈さも感じない。それでいて、激下りが続いても、足指の爪がやられるような痛みも感じない。走り終えた翌日(および2日後)でも、筋肉痛がない(あくまで本人の感想……)。つまり、足に優しい。さすが〈HOKA〉が誇る超~汎用モデル〈スピードゴート〉の最新モデルだけある。

トレイルでは、原則ハイカー優先。すれ違う際は、止まって(広い道なら歩いて)トレイルをシェアしよう。

スピード命のフラット(あくまで本人の主観)。

上りがあれば、下りも、スピードを出せるフラット(あくまで本人の主観……)もある。サーフェイスが比較的に安定していれば、《スピードゴート 7》で快適に飛ばせる。ミッドソールに搭載の「スーパークリティカルフォームEVA」は、クッション性に優れたEVAの特性を持ちつつ、スーパー軽量かつウルトラ反発なので、ガシガシ走れるのだ(おまけに耐久性までマーベラス!)。

さらに驚くべきは、足の甲に当たる広いタンと、足首のカットライン。よくよくフィットするので、砂礫や小枝や土がシューズに入りにくい。止まってシューズを脱いで、ごみを叩き出すことがマレになる。つまり、ストレスフリーなのだ。

アップダウンが続くレースのみならず、長丁場やテクニカルなルートでは、とても嬉しい機能。しかも、丸2日履き続けても、足の甲を包むアッパーの汚れも目立たない。電車での移動でも、周囲の目が気にならないのだ(けっこう嬉しい!)。

シューズ内に異物が入りにくい。つまりストレスフリーなのだ。
マメや擦れの原因となるため、シューズ内はできるだけドライに保ちたい……。
木の根は、滑りもするので、できれば踏まずに進もう。

岩場を進み、木の根を跨ぎ、沢をザブザブ渡渉。

山があれば、谷もある。撮影とは別日の試走で、根っこだらけの道を飛ばしても、沢をジャブジャブと渡って河原の飛び石や浅瀬をガシガシ進んでも、滑ることはない(調子に乗って、滝壺近くで、コケの付いた確実に滑りそうな岩を踏んだら、さすがに滑ったが……)。

《スピードゴート 7》の万能感は半端ないが、上記のようなコケの岩やツルツルの石灰岩、雪や粘性の高い泥など、物理的に限界のサーフェイスもある。相手はあくまで山。過信は事故のもとなので、慎しみたい。 

それにしても驚くのは、水抜け。ザバザバとたっぷり冷たい沢を小走りしても、シューズの甲を包むアッパーのちょうど指の付け根あたりにある、深い緑色のメッシュ(特許出願中という「ダイナミックバンプ」)から、着地のたびに水が噴き出す。指先を中心にハイドレーションが働き、ものの数分で不快感は消滅。シューズ内の不快感は最小限となる。

と、いうことで《スピードゴート 7》。初めてのトレランにも、レースの相棒にも、もってこいの一足と言える。もちろん、トレランはシューズだけあれば始められるアクティビティではないが、まずは気持ちを上げるべく《スピードゴート 7》を手元に置いておこう。

撮影/中田 悟

この記事を書いた人
大田原 透
大田原 透
編集者
フィットネスライフスタイルを提唱する『Tarzan』元編集長。1968年生まれ、身長175㎝、体重68㎏。フルマラソンのベストタイムは3時間36分台という典型的な市民ランナーにして、ウルトラマラソン、トレイルランニング、トレッキング、ロードバイクなど長時間&長距離スポーツをこよなく愛す、走って&試して&書く業界猛者のひとり。
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