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R.M Monthly Authentics:初めてでも間違いないランニングシューズ選び。《アディゼロ EVO SL》前編

大田原透

日進月歩、常に進化を遂げるランニングシューズ。開発スピードは近年さらに加速し、2年前のシューズすら時代遅れに感じるほど……。というコトで「R.M」では“旬”にして“間違いのない”1足を求めて取材をスタートする。

といっても我々が求めるのは、厚底カーボンで表彰台を狙うスーパーシューズでは、もちろんない。運動不足解消、脂肪燃焼、気晴らしにランニングをする、競技未満の“フツー”のランニングシーンに合う、いわば“オーセンティック”な1足を探したいのだ。

もちろんトレンドを踏まえた、カッコよさもマル必。初心者でも怪我のリスクを抑えられ、ランニングが苦でなくなり、あわよくばマラソン大会などのイベントにも出られるような1足。シューズ以外の道具を特に必要としないランニングだからこそ、“ちょっと良いモノ”が欲しいのである。

《アディゼロ EVO SL》 サイズは、メンズ24.5~34.5㎝、レディース22.0~29.0㎝。カラーは2025年秋冬で9色展開(店舗により取り扱いカラーは異なる)。19,800円(税込)。

アディダス ジャパンが薦める、〈アディゼロ〉のデイリートレーニングモデル

訪れたのは、世界レベルのマラソン大会や、駅伝でのシューズの評価がうなぎ上りのアディダス。なかでも〈アディゼロ〉は、アディダスが誇るランニングシューズのトップレンジである。たくさんの〈アディゼロ〉シリーズの中で、我々のリクエストに叶う1足を推薦してもらうことにした。

「お薦めは《アディゼロ EVO SL》です。2024年11月の発売以来、予想を上回る反響をいただいています。クセがない、ニュートラルな走り心地が特徴のトレーニングモデルで、上級者のインターバルなどの高強度の練習やジョグ、これからランニングを始める方の一足目としても扱いやすいという評価をいただいています」

澱みなく語ってくれたのは、アディダス ジャパンの小林雅弥さん。ランニングやアウトドアなどのマーケティングを統括するシニアマネージャーである。東京・六本木一丁目の高層ビルの開放的なミーティングルームで、《アディゼロ EVO SL》の推しポイントをじっくり伺う貴重な機会を得ることができた。

右は、今回の取材に応えてくれた、アディダス ジャパンの小林雅弥さん。左の髭ボブは筆者。

スーパーシューズの流行だからこそ、求められる1足

「〈アディゼロ〉シリーズには、表彰台を狙う選手が履くスーパーシューズだけでなく、さまざまなモデルが用意されています。トレーニング用だけでも、いくつものバリエーションがある理由は怪我の防止です。トレーニングの内容に合わせて選べるようにしています」

小林さんが語るスーパーシューズの流行は、トップ層のレーシングモデルだけでなく、今やトレーニングモデルにも及んでいる。スーパーシューズの特徴をザックリ書くと、カーボンやグラスファイバーのプレートをバネに、高反発で軽量なミッドソールによって着地衝撃を推進力に変えることで、今までにない“速さ”を身につけられる点にある。

「プレート入りのシューズは、確かにスピードは出ます。しかし、本来のスピード以上で走り続けることで、脚の負担に繋がることもあります。そのためも《アディゼロ EVO SL》は、トップモデルと同じ最新の高反発素材を使用しながら、かつクセのないトレーニングモデルのニーズをもとに開発されました」

「ライトストライク プロ」の厚みは、ヒール側が38.5mm、前側は32mm。前後の厚みの差(ドロップ)は6.5mmの比較的にフラットなシューズと言える。

レースモデルに採用される「ライトストライク プロ」を搭載

小林さんが語る最新の高反発素材が「ライトストライク プロ」。厚みのあるミッドソールを印象づける高発泡のEVA素材で、“地面を弾くような反発感”が得られる。高速になるほど反発性が高まるため、レース用のトップモデルに採用されているフォーム材だ。

この「ライトストライク プロ」をトレーニングモデルの《アディゼロ EVO SL》にも採用することで、「ライトストライク プロ」で得られる高反発の感覚を失わずに、より安全にトレーニングを積むことが可能となるハズだ。

「まさにそれが、上級者に受け入れられている理由だと思っています。結果として、(フルマラソンを4時間未満で走る)サブ4やサブ3の上級者や、大学の陸上部の選手も使っていただいているので驚いています。もうひとつ驚いたのは、ビギナー層も含めた、より広範囲のランナーからの高い支持です」

かかとも含めたアッパー全体が足をシッカリ包み込んでくれるのは「マイクロフィット」という考え方に基づく長年のラスト(足型)開発の賜物。ソールのグレー部分が、欧州車のタイヤでお馴染みの「コンチネンタルラバー」。

開発コンセプトに籠められた、“走る楽しさ”

《アディゼロ EVO SL》は、日本では大々的な宣伝キャンペーンをしているわけではない。にもかかわらず、幅広いランナー層に口コミで広がり、大きな支持を得ているのは、汎用性の高さと、「ライトストライク プロ」で得られる“走る楽しさ”あると小林さんは考えている。

「多くのランナーの支持に繋がったのが『ライトストライク プロ』の、地面をリズミカルに弾いてカラダを前に進めてくれる反発性能です。しかも、片足224g(27㎝)は、トレーニングシューズとしては、とても軽量。“走る楽しさ”が開発コンセプトにあるので、それが伝わったことは嬉しく感じています」

高支持の理由には、デザインもあるという。《アディゼロ EVO SL》のデザイン開発は、〈アディゼロ〉シリーズのハイエンドモデルの《アディゼロ アディオス PRO EVO 1》がベースになっている。《EVO 1》は、無駄を極力削いだ片足138g(27㎝)の超軽量、耐久性はフルマラソン1回分というコンペに特化したモデル。2023年に発表され、税込み82,500円という価格も含め、大きな話題となったことは記憶に新しい。

小林さんが手に持つのが、デザインのオリジナルとなる《アディゼロ アディオス PRO EVO 1》。手前の2足は今回紹介の《アディゼロEVO SL》。

日本で誕生した〈アディゼロ〉の最新にして最速のDNA

「機能美の塊のような《EVO 1》のデザインを、誰もが履けるシューズに採用して欲しいという声が、世界中のランナーやスニーカーヘッズ(コレクター)たちから寄せられました。そのデザインのDNAを《アディゼロ EVO SL》は引き継いでいます」

〈アディゼロ〉シリーズの誕生は、2005年。“日本人を速くする”“ゼロからの挑戦”として日本で開発プロジェクトが立ち上がり、今ではアディダスの“最速”を支える世界ブランドに成長している。2024年の6大メジャーマラソンで表彰台に立った選手の4割以上が〈アディゼロ〉を履くほど。そうしたエリートランナーたちに圧倒的な支持されたのが、《EVO 1》なのである。

「ファッション界やスニーカーヘッズの方々は、《EVO 1》のデザインのDNAを引き継ぐ《アディゼロ EVO SL》を“ランニング界で最もクールなシューズ”と受け止めているようです。トレンドとなりつつある“ライフスタイルランニング”の文脈でも捉えてもらっているので、スニーカーブティックのようなお店にも、まだまだ少ないのですが《アディゼロ EVO SL》が置かれるようになってきました」

小林さんの話を聞くほどに、《アディゼロ EVO SL》を実際に履いて走ってみたくなってきた。というコトで、ランニングウェアに着替えて、試履きを敢行。本連載の目的は、“ちょっと走ってみようかなぁ”というランニングに合う、オーセンティックな1足探し。インプレで想定するシーンも、次の4つとなる。

①まずは、足入れ、②ビギナーを含めた「運動不足の解消」を目指す低速での走行、③お腹周りの体脂肪を燃やすための長時間走に合った「痩せラン」ペース、④そして気分爽快のためのダッシュの「スカッと走」である。

いずれも、競技未満の“フツー”のランニングシーン。では、それぞれの速度帯での《アディゼロ EVO SL》の実力は……というところで、残念ながら文字数が増え過ぎたため、次回! 乞うご期待なのである。

撮影:小川朋央

この記事を書いた人
大田原 透
大田原 透
編集者
フィットネスライフスタイルを提唱する『Tarzan』元編集長。1968年生まれ、身長175㎝、体重68㎏。フルマラソンのベストタイムは3時間36分台という典型的な市民ランナーにして、ウルトラマラソン、トレイルランニング、トレッキング、ロードバイクなど長時間&長距離スポーツをこよなく愛す、走って&試して&書く業界猛者のひとり。
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