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R.M Monthly Authentics:初めてでも間違いないランニングシューズ選び。《アディゼロ EVO SL》後編

大田原透
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ランニングがあるライフスタイルのための「R.M」がお届けする、日々のランニングのための1足を探し求める連載「Monthly Authentics 」。今月の注目は、アディダスのデイリートレーナー《アディゼロ EVO SL》である。

《アディゼロ EVO SL》は、ゴリゴリのレース用スーパーシューズのデザインDNAを引き継ぎ、さらに“最速”を可能たらしめる高反発素材「ライトストライク プロ」を採用していながら、初心者からエリートランナーまでの高い支持を集める、むっちゃ汎用性が高いモデルだ。

前回は、東京・六本木一丁目のアディダス ジャパンのオシャレなオフィスで、開発の経緯を取材。そして今回は、いよいよ実際に《アディゼロ EVO SL》で走ってのレビューである。日々のフツーのランニングで想定されるシーンは、次の4つである。

まずは、シューズに足を入れた感覚およびウォーキングのインプレ。そして、「運動不足解消」の目的で走る、1㎞を約7分(=キロ7分)の、の~んびりペース。続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分(=キロ6分)のゆっくりペース。

最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(=キロ4.5~5分)「スカッとラン」。前置きが長くなってしまったが、さっそく《アディゼロ EVO SL》を実際に履いてみることにしよう。

《アディゼロ EVO SL》 サイズは、メンズ24.5~34.5㎝、レディース22.0~29.0㎝。カラーは2025年秋冬で9色展開(店舗により取り扱いカラーは異なる)。19,800円(税込)。

まずは、足入れ&ウォーキングから

かかとに合わせて《アディゼロ EVO SL》を履き、シューレース(靴ひも)をしっかり結んで、ゆっくり立ってみよう。ミッドソールの「ライトストライク プロ」がわずかに沈み込み、体重を支えてくれる。さらに、後ろに荷重させると、驚くほど沈み込むのが分かる。

荷重を変えても、ほど良いフィット感。一歩踏み出せば、なるほど「ライトストライク プロ」の軟らかさを体感できる。ちょっと沈み過ぎ~な快適さだが、ランニングシューズに必要な、ほど良い硬さも担保。アッパーのエンジニアードメッシュも、かかとのヒールカウンターも足にフィットする快適さである。

しかも、ゴリゴリのレース用スーパーシューズのデザインDNAを引き継ぐクールなルックス。オシャレとは程遠い筆者だが、ファッション界のオシャレスニーカーとして注目されているのも、なるほど納得なのである。

今回の試走には、比較のために〈アディゼロ〉シリーズのレース用とジョグ用のモデルも用意して臨んだ。

1キロ7分の「運動不足解消」ペース♪

カラダとココロの健康のためなら、無理して怪我したり、誰かと競って悔しい思いなどせず、好きな距離を、気ままに走りたい。というが、1㎞を7分かけて走るペース(=キロ7分)。もちろん人によって違うが、まずはランニングに慣れるための、ゆっくりペースだ。

そこで《アディゼロ EVO SL》。足入れの際に感じた軟らかさに反して、ゆっくり走ってもしっかり安定感が得られる。同じ「ライトストライク プロ」を搭載したアディダスのカーボン入りのレースシューズは、低速で走ると軟らか過ぎると感じるが、《アディゼロ EVO SL》は低速でもしっかり安定している。

ホ~ヘ~と不思議だが、近年のミッドソール素材の優秀性は、カラダで納得するしかない。「ライトストライク プロ」の厚さは、かかと部分では38.5㎜、前足部では32㎜。軽くて軟らかな「ライトストライク プロ」は、それでいて高反発な素材特性を《アディゼロ EVO SL》でいかんなく発揮している。

上記の《アディゼロ EVO SL》のかかと部と前足部は厚みの差(ドロップ)は、6.5㎜。比較的にマイルドな差のため、トレーニングを積んで脚力を養うためにもってこい。しかも、かかとからつま先にかけて、揺りかごのような緩やかなカーブ(ロッカー)があるため、素直にカラダが前に出る。走り出すだけで、自然と快適に走れちゃうって寸法なのだ。

〈アディゼロ〉シリーズは、2005年に日本で誕生した。実は、最初のコレクションを筆者は履いている。軽量にしてフィッティングが良く、ハイレベル。その哲学は現在も継承されている。

1キロ6分の「痩せラン」ペース

短い距離をゼーハー走るよりも、リラックスして長~く走りたい。目指すべきは、た~っぷりの体脂肪燃焼。という方のための1㎞を6分で走る「痩せラン」ペース(=キロ6分)。別名ニコニコペース、誰かとおしゃべりしながらの速度である。

ちなみに、体重70㎏の人が、10㎞走るエネルギーは約700キロカロリーと言われている(体重1㎏✕ラン1㎞=およその消費カロリー)。ランチ約1食分の消費カロリーを、少ないと考えるか、多いと考えるかは、あなた次第。しかし、走り出しさえすれば、自ずと結果はついてくる。

そこで《アディゼロ EVO SL》。ペースを上げた分、反発性能が上がっているのが体感できる。クルマで例えると、“オートマ車”並みのスムーズさ。デイリートレーナーと言われるジャンルだと、ペースの加減速をマニュアル車並みに自分で行うシューズのニーズもあるが、《アディゼロ EVO SL》はとってもカジュアル(筆者的には、TPOに合わせるので、どっちも♡)。

重量224g(片足、27㎝)の軽さも、トレーニングモデルとして超クール。だから、どこまでも走っていけそう。しかも、距離の記録を更新するほど、体重の記録も(もちろんマイナス方向に)更新できちゃう。ランニングの楽しさを体感できるので、体重の記録更新とともにフルマラソン完走も夢ではない一足と言えよう。

速度を上げても快適なフィッティング感。フィッティングの要となるラスト(足型)は、アディダスのドイツ本社の日本人のスタッフが手掛けているという。

1キロ5分(=キロ5分)以下で駆け抜けたい、「スカッとラン」!

“ランニングの最後はダッシュで仕上げる”、“スピード命”なのも、ランニングの楽しみ方。そこで《アディゼロ EVO SL》。フラットな路面でさらに加速しても、きれいなオートマ感! なるほど、ビギナー層から大学や実業団レベルの選手のトレーニング用途まで、汎用性が高いというのも頷ける。

さらに撮影の後日、(とても意地悪だが)試しに石畳のアップダウンのある道を、しかも雨の日に走ってみた。アウトソールの「コンチネンタルラバー」は、川のように水が流れるサーフェイス(路面)でもグリップ。さらに舗装路、石畳、砂利道とサーフェイスを変えてもロードノイズは気にならなかった。

唯一、不安定な石畳での激下りに高速で突っ込むと、体重70㎏の筆者だと着地時のフォームの沈み込みから、コンマ単位のわずかな反発の遅れを感じた。石畳の激下りという、通常のランニングイベントにはない特殊な(意地悪な)サーフェイスが終わり、フラットな路面に戻っての高速走行では、全く違和感がなかったことを付記しておきたい。

《アディゼロ EVO SL》の汎用性の高さ、履く人を選ばない設計は、これから走り始める方を含め、多くの人たちのランニングライフをより豊かに導いてくれるはずだ。日本市場では、大きな宣伝やキャンペーンもなく売れているという、まさにオーセンティックな一足。こうした良心的なシリーズこそ、息長く続けて欲しいと願っている。アディダスさん、頼みます!

撮影:小川朋央

この記事を書いた人
大田原 透
大田原 透
編集者
フィットネスライフスタイルを提唱する『Tarzan』元編集長。1968年生まれ、身長175㎝、体重68㎏。フルマラソンのベストタイムは3時間36分台という典型的な市民ランナーにして、ウルトラマラソン、トレイルランニング、トレッキング、ロードバイクなど長時間&長距離スポーツをこよなく愛す、走って&試して&書く業界猛者のひとり。
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