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ナイキ原宿に導入された「NSRL Form」ってどんなもの?

神津 文人

去る9月11日、ナイキ原宿(NIKE HARAJUKU)が、移転リニューアルオープンしました。場所は、以前の店舗があった場所のすぐ隣の原宿クエストビルの1〜3階。総面積は1860平方メートルで、前店舗より増床しています。

嬉しいことに、ランニングは注力カテゴリーとなっていて、1階はランニングにフォーカスされた品揃え。定期的にランニングセッションが開催されるほか、最新シューズやアパレルのトライアルサービスも実施されるとのこと。楽しみですね!

わずか2分のランでフォームを解析する「NSRL Form」

そしてランナーの方たちが最も気になるのは、日本初導入(世界でも上海、ロンドンに次いで3か所目)となる「NSRL Foam」ではないかと思います(もしかしたら既に体験された方もいるかもしれません)。

「NSRL Form」とは、ナイキスポーツ研究所(Nike Sport Research Lab)の研究から生まれたランニング動作分析ツール。ナイキスポーツ研究所の持つバイオメカニクスの知見と、最先端のモーション キャプチャー テクノロジーを組み合わせ、横ぶれ、腰の沈み、内寄りの着地、上下動、上半身の傾き、膝下の振り出しという6つの指標で、ランニングフォームを分析してくれます。

ナイキ原宿の1階に設置された「NSRL Form」

ランナーは2分間、トレッドミルの上を走るだけ(心地好いジョグペースで!)。6台のカメラが体の150か所のポイントを測定。前述した6つの指標に加えて、ケイデンス(1分間あたりの歩数)と着地部位も計測されます。

2分間と聞くと「たったそれだけで大丈夫なの?」と思う人もいるでしょう。しかも最初の1分間は、ランナーがトレッドミルに慣れるためのウォーミングアップタイム。実際のフォーム分析に使われるのは15秒ほどのデータなんだそうです。

「さまざまな研究で、走る動きを十分に捉えるには、15歩ほど必要だとされています。15秒間あれば、25〜30歩ほどを計測することができますから、ランニングフォームの傾向を分析するのに必要なデータが取得できるのです」と、ナイキ原宿のオープンに合わせて来日したナイキスポーツ研究所のキャサリン・ポーさんが疑問に答えてくれました。

「NSRL Form」について、インタビューに応じてくれたナイキスポーツ研究所のキャサリン・ポーさん

疲労時のフォームの乱れも実は最初から傾向がある

トレッドミルとロードでは動きが違ってしまうのではないか。もう少し長い時間走ったほうが(少し疲れたほうが)フォームの悪い部分が見えてくるのではないか。と思った方もいるでしょう。実際、筆者もレース後半になると腰が落ちてくる自覚がありつつ、短い距離ならそれなりに走れているのではないかと思っていたので(笑)、気になった部分でした。しかし、それらの心配はないようです。

「もちろんトレッドミルを走るのとロードを走るのとで動きが完全に一致するわけではありませんが、フォームの傾向というのは変わりません。自走式のものや、走行面がカーブしているものでは違いが出てくると思いますが、NSRL Formのために選んだトレッドミルは走行面がフラットですし、実際にNSRLで使用しているトレッドミルのうちの1つでもあります。また、テストの際、特定のシューズを履く必要もありません。ほとんどの場合、ランニングシューズはランニングフォームを変えることがないからです。バイオメカニクスというのはとても強力で、シューズが動きをガイドしたとしても、バイオメカニクスを変えることはないのです。

ランニング動作は時間の経過とともにどのように変化するのかというのも、よく聞かれる質問の1つです。2分間で何か変化が見られる場合、疲労が増すにつれてその変化は顕著になります。走り始めたときから目に見えるよくない部分があったとすれば、それは時間経過とともに悪化してく一方だということです。逆を言えば、レース後半でどのようにフォームが悪化するかというのは、最初の2分でその傾向を捉えることもできるのです」(ポーさん)

NSRL Form」は2年の歳月をかけて開発

「NSRL Form」の魅力の1つは、フォームチェックを始めるための煩わしい準備が不要な点。体のあちこちにマーカーをつけたり、専用のスーツを着たりする必要がありません。複雑なオペレーションが不要で、気軽に精密なフォームチェックができるというのも、こだわりのポイントだったようです。

「NSRL Formは、ナイキスポーツ研究所でエリートアスリートに提供してきたものを、一般アスリートに提供するサービスです。研究所でのテストではマーカーが使えますが、ストアに設置するNSRL Formでの測定で、全身にマーカーを付けるのは現実的ではありません。モーションキャプチャーを行なうソフトウェアのパートナーと協力し、マーカーを使用しないことをベースにアルゴリズムを構築しました。実は開発の時間の大部分をかけたのはその部分なのです」(ポーさん)

マーカーなどを装着する必要はなし。いつも通りにトレッドミルを走れば、周辺に設置された6台のカメラが体の150か所のポイントを測定してくれます

「NSRL Form」のフォームチェックは実際どうだった?

百聞は一見に如かずということで、「NSRL Form」を体験させてもらいました。格好は動きやすいものであればOK。自分の走っている動画や写真を後でチェックできることもあり、オーバーサイズのゆったりした長袖長ズボンよりは、ランニングをするときの格好に近いほうが良いかなと思います(せっかくの機会ですしね)。シューズの縛りもありませんが、筆者は最近よくランニングのときに履いている「ナイキ ストラクチャー 26」でトレッドミルを走りました。

マーカーをつけたり、専用スーツに着替えたりといったことをする必要がないので、スタートまでとてもスムーズです。自分が快適に走れるペースでということだったので、キロ6分で2分間走りました。言うまでもなく2分はあっという間です(笑)。

データ分析が終わったら、ショップアスリート(スタッフ)の方が、レポートを見ながら分析結果について説明してくれます。筆者の最重要課題は、“腰の沈み”。これについては、長い距離を走ったときに自覚していたので、納得の結果。2分のランニングでも、はっきりとわかるものなのなんですね。

レポートはメールで送ってもらえるので(店舗で見られる動画部分は写真になります)、アドバイスや提案されたワークアウトメニューなどを日々チェックすることができます。ちなみにおすすめされるシューズは、レーシングシューズではなく、日々のトレーニングで活用するロードランニング用シューズになります(ペガサスシリーズ、ボメロシリーズ、ストラクチャーシリーズ)。

「NSRL Form」は、1コマ15分の優先予約制(予約は公式サイトから)。無料(ナイキメンバー対象)で体験できます。1万人以上のランナーのデータをもとに開発されたという「NSRL Form」。先行導入した上海では既に1000人以上のランナーが利用し、そのデータも蓄積されているとのこと。今後より多くのデータが集まったら、サービスも進化していくかもしれないですね。

フォームの分析結果はこのような形で見ることができ、PDFファイルをメールで送ってもらえます

リニューアルしたナイキ原宿の中身

「NSRL Form」が設置されている1階は、ランニングにフォーカスしたフロア。ランニングシューズウォールには、ロードシューズ、レースシューズ、トレイルシューズが並んでいます。リニューアルオープンにあわせて「ナイキ ボメロ プラス」のナイキ原宿限定カラーが発売されましたが、今後もナイキ原宿限定のモデルが定期的に登場するのではないかと思います。また、1階にはカスタマイズコーナーの「NIKE BY YOU」も。

2階はウィメンズ(ライフスタイル、トレーニング、バスケットボール)とキッズ、3階はメンズ(ライフスタイル、トレーニング、バスケットボール)とジョーダン ブランドのフロアになっています。

ぜひ、足を運んでみてください。

1階はランニングにフォーカスしたフロア
ナイキ原宿は全3フロア
この記事を書いた人
神津 文人
神津 文人
フリーライター
2013年にフリーライターとなって以来、健康とフィットネス、シューズのテクノロジーを中心に「Tarzan」「GIZMODO」「FashionTechNews」「Runners Pulse」などで執筆。『RUN.MEDIA』では、ブランドヒストリーやシューズの開発ヒストリー記事を担当。
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