ギア

R.M Monthly Authentics:初めてでも間違いないランニングシューズ選び。《 On クラウドブーム マックス》前編

大田原透

ランニングにおける、“オーセンティック” な一足。コレさえ選べば、間違いないシューズを追い求める「R.M」の恒例企画の第2回目は、On(オン)。スイスエンジニアリングを武器に、革新をDNAとして掲げる破竹の勢いのブランドである。

我ら「R.M」は、オーセンティックな一足として、初心者ランナー向けのシューズを推薦してもらう依頼をOnに行った。
その一足を選ぶポイントは、On自慢の最新ゴリゴリのレースシューズではなく、運動不足解消、脂肪燃焼、気晴らしにランニングをする、競技未満の“フツー”のランニングシーンに合うこと。
トレンドを踏まえた、カッコよさもマル必。初心者でも怪我のリスクを抑え、ランニングが苦でなくなり、あわよくばマラソン大会などのイベントにも出られる一足。
そんなワガママなリクエストに応えてくれるシューズこそ、私たちが求めるモノなのだ。

《 On(オン) クラウドブーム マックス》 サイズは、メンズ25.0~32.0および33.0㎝、レディース22.0~28.0㎝および29.0㎝。重量296g(メンズ片足26.5㎝)。カラーは2025年秋冬でメンズ3色、レディース2色展開。28,600円(税込)。

Onのパフォーマンスシューズを支える3つのピラー(柱)

世界で急成長を続けるOn。ご存じように日本でも絶好調で、東京銀座に世界で2番目の規模となるフラッグシップショップを開店させたばかり。しかも、増え続ける社員のために、オフィスも横浜から渋谷へ移転。というコトで、ピカピカのショールームでの取材と撮影となった。

「私たちがお薦めする一足は、《クラウドブーム マックス》です。初めてのフルマラソンも含め、広い層のレースシーンを支えるシューズとして開発しました。オーセンティックといえば……というなOnのシューズはいくつもあるので、正直、私たちも悩みました」

と語るのは、オン・ジャパンの北井健人さん。北井さんによると、Onのパフォーマンスランニングは、主に大きく3つのピラー(柱)があるという。大人気の〈クラウドサーファー〉と〈クラウドモンスター〉、そして3本目の〈クラウドブーム〉。この〈クラウドブーム〉のシリーズは、Onのレーシングモデルに位置づけられている。

右が、取材に応えてくれた、オン・ジャパンの北井健人さん。超~小顔の北井さんが右手に持つ、写真中央のモデルが、《クラウドブーム ストライク LS》。ちなみに、左の髭ボブが筆者。

Onのレースモデルのシリーズに欠けていた、重要なピースとは……

「世界レベルの大会や、日本の駅伝競技などで、トップアスリートたちが成績をたたき出している《クラウドブーム ストライク》や《クラウドブーム ストライク LS》が、徐々に知られるようになってきました」(北井さん)

そんなゴリゴリのレースモデル〈クラウドブーム〉のシリーズ最新作となると、初心者にはとてもとても敷居が高そうに思える。しかし《クラウドブーム マックス》は、そんな状況そのものを変えるべく開発されたシューズなのだという。

「トレーニングでOnのシューズを履く人はたくさんいるのに、レースではOnのシューズが必ずしも選ばれていませんでした。なぜならレースで選ばれるOnのシューズは、今までトップアスリートも着用しているシューズしかありませんでしたから(苦笑)。その欠けたピースを埋めるために《クラウドブーム マックス》が生まれました」(北井さん)

国旗に添えられた「スイス エンジニアリング」の文字。革新をDNAに掲げる、Onのモノづくりへの強いこだわりと誇りの象徴だ。

最新鋭のスイスエンジニアリングが生み出す、“フツー”という名の“非凡”

「《クラウドブーム マックス》は、より多くの方に向けたレーシングシューズという位置付けで開発されました。そのため、“ズバ抜けてココが凄い”というシューズにはなっていません。個々のパーツを見ても、それが言えます」(北井さん)

《クラウドブーム マックス》のミッドソールに搭載されるプレート(スピードボード)は、カーボンではなくグラスファイバー。前者がゴリゴリの硬い板バネであるのに対し、グラスファイバーは程良くしなる。そのため、フルカーボンのシューズを使いこなしきれない走力のランナーでも扱いやすい設計となっている。

「《クラウドブーム マックス》のミッドソールには、On独自の『ヘリオン』という高反発素材を使用しています。しかも、レーシングシューズで採用される、より軽量でクッショニング性能に富む『ハイパーフォーム』と呼ばれるタイプを使用しています」(北井さん) ゴリゴリのレーシングモデルにも使用される高反発の「ヘリオン ハイパーフォーム」の間に、しなやなグラスファイバーのプレートを入れることで、フォームが乱れがちなフルマラソン後半でも安定した走りが得られるのだという。

Onの新たなオーセンティックは、《クラウドブーム マックス》から始まる

「《クラウドブーム マックス》のドロップ(シューズの前足部と踵の高低差)は、8㎜とマイルドです。ロッカー(つま先から踵のかけてのラウンド形状)もキツくはありません。そのため、踵で着地するタイプのランニングフォームの方にも扱いやすい設計になっています」(北井さん)

アッパーは、画像で見ると分厚そうだが、実は薄くて軽量、通気性にも富んでいる。かかとをホールドする部材も、極限の軽量さを求めるゴリゴリのレースモデルとは違い、快適さを優先したしっかりしたパーツを採用している。同クラス他ブランドのトレンドも意識した、計算し尽くされた一足なのである。

「〈クラウドブーム〉は、2020年の夏から始まり、今では世界を舞台に記録を出すシリーズにまで成長しました。ランニングは、私たちOnの起源です。《クラウドブーム マックス》は、〈クラウドブーム〉シリーズのマックスなクッショニングで、より広い層のランナーの心に火を灯してくれることを期待しています」(北井さん)

エアリーなメッシュアッパーには、〈クラウドブーム〉シリーズ共通のデカロゴが。シューレース(靴ひも)は、ズレ防止のギザギザの加工が施され、見た目のインパクトもマシマシだ。

Onを支え続けるクラウドテックテクノロジー

ひと目でOnと分かる最大の特徴、それはソールに空洞を設けたクラウドテックテクノロジーだ。単なる空洞ではなく、クッション性と反発性を兼ね備えるための大切なパーツなのである。42.195㎞という長距離を走り抜くために、《クラウドブーム マックス》では「ヘリオン ハイパーフォーム」でクラウドテックテクノロジーが成型され、ランナーの足を守りながら、着地衝撃を推進力へと換えてくれる。

クラウドテックテクノロジーの誕生は、2010年のスイスのチューリッヒで創業したOnの歴史そのもの。共同創業者のひとりのオリヴィエ・ベルンハルドは、トライアスロンの選手時代に怪我に悩み、自身のためにシューズを作りはじめ、ガーデニングホースをシューズの裏に着けたことを発端にクラウドテックテクノロジー開発と進化が始まった。

「ブランドの哲学でもあるOnという名称は、Onのプロダクトを身に着けることで気持ちのスイッチをOnにする願いを込めています。これからも、クラウドテックテクノロジーも含めてOnの進化が止まることはありません」(北井さん)

急成長を続けるオン・ジャパンのマーケティング部でブランドPR担当する北井さん。北井さんが手に持つのは、レースで気持ちも上がる、シューズに合わせたカラーのウェアの一例(ウィメンズ用トップス)。

《クラウドブーム マックス》のインプレは、次回のお楽しみ!

北井さんの話を聞くほどに、《クラウドブーム マックス》を実際に履いて走ってみたくなってきた。というコトで、快適なOnのランニングウェアに着替えて、試履きへGO。本連載の目的は、“ちょっと走ってみようかなぁ”というランニングに合う、オーセンティックな1足探し。インプレで想定するシーンは、次の4つだ。

①まずは、足入れ、②ビギナーを含めた「運動不足の解消」を目指す低速での走行、③お腹周りの体脂肪を燃やすための長時間走に合った「痩せラン」ペース、④そして気分爽快のためのダッシュの「スカッと走」。

いずれも競技未満の“フツー”のランニングシーン。では、それぞれの速度帯での《クラウドブーム マックス》の実力は……というところで、残念ながら前編は終了。次回に続くのであ~る。 

撮影:小川朋央

この記事を書いた人
大田原 透
大田原 透
編集者
フィットネスライフスタイルを提唱する『Tarzan』元編集長。1968年生まれ、身長175㎝、体重68㎏。フルマラソンのベストタイムは3時間36分台という典型的な市民ランナーにして、ウルトラマラソン、トレイルランニング、トレッキング、ロードバイクなど長時間&長距離スポーツをこよなく愛す、走って&試して&書く業界猛者のひとり。
記事URLをコピーしました