R.M Monthly Authentics:初めてでも間違いないランニングシューズ選び。《 On クラウドブーム マックス》後半
ランニングがあるライフスタイルのための「R.M」がお届けする、日々のランニングのための1足を探す連載「Monthly Authentics」。今月の注目は、レースデビューにぴったりという、On(オン)の《クラウドブーム マックス》である。
《クラウドブーム マックス》は、Onのレーシングモデルにおける、マックスクッショニングタイプ。ふわりとしたOn独自の履き心地の延長線上にありながら、適度な硬さと安定性を持つ、いわば“文武両道の優等生”な一足である。
前編では、横浜から引っ越してきたばかりの東京・渋谷のピカピカのショールームで、開発の経緯を取材。そんでもって今回は、いよいよ実際に《クラウドブーム マックス》で走ってのレビューである。日々のランニングで想定される、次の4つのシーンで、《クラウドブーム マックス》の性能を試すことになる。
まずは、シューズに足を入れて歩いた際のインプレ。次は、「運動不足解消」の目的で走る、1㎞を約7分(=キロ7分)の、の~んびりペース。続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」を想定した、1kmを約6分(=キロ6分)のゆっくりペース。
最後は、距離ではなく、走る爽快感を重視した、1㎞約4分30秒~5分(=キロ4.5~5分)の「スカッとラン」。というコトで、さっそく《クラウドブーム マックス》を実際に履いてみることにしよう。

まずは、足入れ&ウォーキングから
シューズに足を入れると、Onらしいソフトさ♡。踵のホールド感も安心で、その分、前足部はゆったり(足指が遊ぶほどではない)。レース後半の疲労によって、土踏まずから前足部にかけてのアーチが落ちて広がっても、キツく感じさせない“大人の余裕”が感じられる。
平紐のシューレースにはギザギザの加工が施され、しっかり締められる(レース中も緩みにくそう)。立ち上がると、Onファンの期待を裏切らず、フワリとわずかに沈み込む。歩き出せば、フワリフワリ。靴裏全体(ソールの踏み面)が広いので、安定感も◎。
歩き出して、チト気になったのは、アウトソールのラバーが路面をグリップする、わずかなノイズ。もちろんウルサイというレベルではないが、静粛でもない。つまりは、悪条件でもラバーのグリップが効いているってこと。レースシューズとして必要な機能なのである。

1キロ7分の「運動不足解消」ペース♪
カラダとココロを健やかに保つ。だからこそ、ペースなんて気にせず走りたい。とは言え、その“ゆっくりラン”を数値にすると、1㎞を7分かけて走るペース(=キロ7分)ほどとなる。まずは《クラウドブーム マックス》を、このペースで試してみよう。
低速で走った印象は、滑~らか。カラダの余計なブレがなく、湖や内海を大型船に乗ってクルーズしているかのような静かさ。“大船に乗る”とは《クラウドブーム マックス》のための表現なのかも、と思えるほどだ。走れば、先ほどのロードノイズも全く感じない。
静かに進む理由は、単にソール全体が適度に硬いから……とも考えたが、さにあらず。砂利道では、小石や地面の凹凸を、足の裏でキチンと感じる。にもかかわらず、路面の状態にも反応しつつも安定しているのだ。これは、ソールのクッション性と推進力、そして安定性の要となる、ミッドソールの構造によるものと考えるのが妥当だろう。
繊細な路面情報を捉えて足裏に伝えるのは、着地衝撃を吸収しつつ、高度な反発性に換える、ゴリゴリのレーシングモデルにも採用されている「ヘリオン ハイパーフォーム」。フォーム材の中央部には、グラスファイバー製のプレート「スピードボード」が埋め込まれ、着地から蹴り出しまでの軌跡をブレなく安定させている。両者の組み合わせが、奏功しているのだ。

1キロ6分の「痩せラン」ペ~ス
わずかに、スピードを上げてみよう。運動不足から、運動充足になれば、走力も上がり、気持ちも体型も変化。変化に気づけば、さらなる野望への火が灯る。待っているのは、スリムな私。「自分史上最大の作戦」の幕開けである。
スピードをアップしても、《クラウドブーム マックス》の安定感は崩れず、ブレない。スピードを上げるほどに、フォームの反発性も上がり、安定感が増すのだ。ペースをいろいろ変えてみたが、この速度帯が《クラウドブーム マックス》の快適さをイチバンに感じるだろう(あくまで個人の感想……)。
と書くのも、今までOnは、特定のシューズに対して、目安になる速度(フルマラソンの完走タイム)を打ち出すことはなかった(と記憶している)。しかし《クラウドブーム マックス》のコミュニケーションワードには「4時間30分以内」を掲げている。42.195㎞を1キロ6分のペースで走れば、まさに「4時間30分以内」はドンピシャなのだ。
これからマラソンに挑戦される方のために、少し付け加えさせていただくと、「4時間30分以内(サブ4.5)」は、途中で止まったり歩かずに、全行程を走り切って得られるタイムの目安なのだ。痩せランという「自分史上最大の作戦」のゴールに、スリムな私と、弱い自分に打ち克った勝利が待っているなんて、ステキ過ぎでしょ♪

1キロ5分(=キロ5分)以下で駆け抜けたい、「スカッとラン」!
量よりも、質。“スピード命”も、ランニングの楽しみ方。そこで《クラウドブーム マックス》を、下り坂も使い、高速(筆者比)の1キロ5分以下で試してみる。スピードを上げて下り坂に突っ込んでも、安定感は揺るがず、サスガ! しかしながら、ゴール間際の競り合いで勝てるか? と問われたら、「Onのヤンチャなシューズには勝てない」と答えたい。
開発のコンセプトに合わせて《クラウドブーム マックス》に採用されたミッドソールのプレート「スピードボード」は、グラスファイバー製。ある程度の硬度はあるが、カーボン製の「スピードボード」が板バネの役割をするのとは異なり、安定性を確実にするために内蔵されている。ハーフマラソン以上の距離を、確実に走り切る機能こそが《クラウドブーム マックス》の真骨頂なのだ。
《クラウドブーム マックス》の基本的なスペックは、派手な機能をオンするのではなく、最先端のテクノロジーを駆使しながら、むしろ“フツー”の使い勝手の良さを追求している。OnらしからぬOnの懐の広さと深さを《クラウドブーム マックス》に感じるのは、筆者だけではないはずだ。新たなOnのオーセンティックの誕生、めでたいっ!
撮影:小川朋央


