ミズノの研究開発拠点「MIZUNO ENGINE」ってどんなところ?
昨年12月、ミズノは新たなレーシングシューズ「ハイパーワープ」シリーズを発売しました。アスリートの声を聞き直し、ゼロから作り上げたという「ハイパーワープ」。全日本大学女子駅伝と富士山女子駅伝の2冠を達成した城西大学の金子陽向選手や本間香選手、今年のニューイヤー駅伝で悲願の初優勝を果たしたGMOインターネットグループの嶋津雄大選手らが、「ハイパーワープ」とともに区間新記録をマークしました。
「ハイパーワープ」シリーズや、日々のトレーニングをサポートする「ミズノ ネオ」シリーズなど、近年、画期的なモデルをリリースしているミズノ。新しいチャレンジへの速度感がましているような印象を受けます。そんなミズノの研究開発の拠点が、2022年11月に誕生したイノベーションセンター「MIZUNO ENGINE(ミズノエンジン)」。「MIZUNO ENGINE」はいったいどんな場所で、できたことで何が変わったのでしょうか。その真相を探るべく、現地へ足を運びました。

行われているのは“はかる”“つくる”“ためす”の高速回転
「MIZUNO ENGINE」は、研究開発を強化し、スポーツによる社会イノベーション創出を加速させるために総事業費50億円をかけて建設された施設。研究開発の基本となる「はかる」(さまざまなデータの計測)、「つくる」(計測したデータをもとにしたサンプル製作)、「ためす」(さまざまな環境でのテスト)という3つの商品開発プロセスを実践できる場所です。「MIZUNO ENGINE」の存在は、もちろんランニングシューズ開発にも大きなプラスになっています。
「MIZUNO ENGINEは、“はかる”“つくる”“ためす”の高速回転ということを基本的なコンセプトとして掲げています。“はかる”に関してですが、ランニングシューズにおいてはその性能を計測することができます。機械試験、実際に人に履いてもらってタータンやアスファルトの上を走って地面反力を測定する、トレッドミルを走って動作計測をするなど、さまざまな“はかる”が可能です。試作の設備も備えていますので、得られたデータをもとにサンプルを微調整し、再びテストをするといったことがクイックにできるようになっています」と、ミズノ グローバルフットウエアプロダクト本部 デザイン・開発ソーシング部の岡本英也さんが話してくれました。
たとえば、ミッドソールに使われるフォーム素材の開発、シューズの金型製作といったことはMIZUNO ENGINEでは行われていません。
「マテリアルの開発がここでできないわけではないのですが、今現在は海外の工場で行っていて、そこでできた新素材が、どんな性能なのか、実際に履いたときにどうなのか、他の素材と組み合わせたときにどうなるのかといったことをMIZUNO ENGINEでテストしています。反発性能やクッション性能というのは機械試験で、実際に着地を模擬するような形で計測します。あとは、実際に走路を走ることで安定性(ブレがどの程度あるか)などを評価して、マテリアルの良し悪しがすぐにわかるようになっています」
金型が必要となるランニングシューズのサンプル製作は、短期間で何十回、何百回と繰り返すことができません。その1つのサンプルのクオリティ、精度を上げるために、MIZUNO ENGINEで試行錯誤が行われます。
「ミッドソールの一部を削って空洞や溝を設ける、あるいは同じ素材のシートがあるのでそれを足してみる、アウトソールの一部をなくしてみるといった調整はクイックにできます。精度としては手加工レベルではありますが、次のサンプルに進む前に調整とテストを繰り返し、データを集めることはとても重要で、限られた開発期間の中で精度を高めていくこと、チャンスを確実に活かしていくことにつながります」
もちろん、「MIZUNO ENGINE」誕生以前も同様のことが行われていたわけですが、“はかる”“つくる”“ためす”のすべてが高速化したことで、トライの回数が明らかに増えたそうです。






「ハイパーワープ」の開発にも「MIZUNO ENGINE」が貢献
軽量性・反発性・安定性の三位一体を体現した「ハイパーワープ」シリーズは、約137g(片足27.0cm)の超軽量を実現した「ハイパーワープ ピュア」、反発性と安定性をハイレベルで両立した「ハイパーワープ エリート」、SMOOTH SPEED ASSISTを採用した「ハイパーワープ プロ」の3モデルで構成されています。ランナーが好みに合わせてレーシングシューズが選べるように選択肢が用意されているわけですが、「ハイパーワープ」の各モデルの開発にもミリ単位の調整が行われたそうです。
「ハイパーワープ シリーズは、アスリートの声を聞き直しゼロから作り上げたのですが、当然ながらトップアスリートの方たちの感覚というのは非常に鋭くシビアで、求めているものに近づけるためにミリ単位の調整というのを何度も繰り返しました。正直開発期間がそれほど長くあったわけではなく、サンプルを作ったのは数度ですが、その間の微調整をMIZUNO ENGINEで繰り返したことでアスリートに満足してもらえるものを作ることができました」と話してくれたのは、ミズノ グローバルフットウエアプロダクト本部 商品企画部 パフォーマンスランニング企画課の須藤眞吾さん。
たとえばミッドソールを1mm足す、1mm削る、ドロップ(前足部と踵部の高低差)を1mm変える、ミッドソールの張り出しを膨らます、えぐるだけで、繊細な感覚を持つトップアスリートからのフィードバックはガラリと変わってしまうそう。試行錯誤の末に仕上げられた3モデルは、実際に履いてみるとどれも全く違う印象で、それぞれに個性があります。気になっているランナーの方は、ぜひ一度足を入れてみてください。

ニューモデル「ミズノ ネオ ゼン 2」が登場
日々のジョグやトレーニングをサポートするモデルとして、2024年12月に発売された「ミズノ ネオ ゼン」。その後継モデル「ミズノ ネオ ゼン 2」が1月9日に発表されました。MIZUNO ENGINEについて話をうかがった岡本英也さんは、その開発にも携わっています。

「前作から大きく変わったのはアッパーの部分です。前作はワンピースのニットアッパーでしたが、ミズノ ネオ ゼン 2はタンの部分にニットを残しつつ、全体にはジャガードメッシュを採用しています。評価されていた足あたりの良さを維持しながら、踵周辺を中心に抑えるところをしっかり抑えています。ミッドソールに関しては前作と同じミズノエナジーネクストなのですが、配合としてはちょっと調整を加えていて、前作のものよりも少ししっかりしたステーブルなものに変更しています」
ソフトな接地感とバウンス感が評価される一方で、コアなランナーからは「もう少し反発がクイックなほうがいい」「もう少し安定感が欲しい」といった声があったとのこと。そこで、ミッドソールの配合を調整し、バウンス感を残しながらも、クイックなレスポンス、安定感が得られるものになったのだそうです。結果、ミズノ ネオ ゼン 2はジョグからテンポアップ走まで、ランナーがより幅広いシーン、より広い速度帯で活用できるシューズに仕上がっています。
底面から見たときのソールの空洞の持たせ方や、ミッドソールの横方向への膨らみ、アウトソールのラバーの配置なども「MIZUNO ENGINE」で試行錯誤を重ね、最終的な形へと落とし込んでいったそうです。
せっかくの機会なので、「MIZUNO ENGINE」内のアスファルトのコースを「ミズノ ネオ ゼン 2」を履いて走らせてもらったのですが、確かに前作よりも明らかに安定性とレスポンスが向上している感覚が得られました。楽しく快適にデイリーのランニングを行えるシューズだと言えると思います。


「ハイパーワープ」に「ミズノ ネオ ゼン 2」。「MIZUNO ENGINE」での“はかる”“つくる”“ためす”の高速回転を背景に生まれたミズノの新作シューズは、多くのランナーから支持されそうな予感がします。


