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アスリートとランニングシューズ【学法石川編】

神津 文人

トップアスリートたちは、シューズにどんな機能を求め、どのように履き分けてトレーニングを行っているのでしょうか。2025年12月、全国高校駅伝大会(都大路)で初優勝を果たした学法石川こと学校法人 石川高等学校。福島県勢としても初めての優勝で、2時間0分36秒という大会新記録をマークしました。1区を走り日本人最高記録(28分20秒)で区間賞を獲得した増子陽太選手と、チームを率いる松田和宏監督に話を聞きました。

「ボメロ 17」から「ペガサス 42」へ

3月に学法石川を卒業し早稲田大学に進学した増子選手が、最近までジョグ用シューズとして愛用していたのは、ボメロとしては一世代前の「ナイキ ボメロ 17」。ミッドソールに、軽量で反発性に優れたズームX フォームと、衝撃吸収性と安定性を両立したクシュロンフォームを採用したモデルです。

都大路の1区で区間賞を獲得した増子陽太選手

「自分は、どちらかというと自分の脚で走りたいタイプで、程よく反発感もあり、程よく硬い接地感があるシューズが好きですね」

その「ボメロ 17」と似た感覚が得られるのが、ニューモデルの「ナイキ ペガサス 42」なのだそう。「ペガサス 42」は、曲線的な形状のエア ズーム ユニットをフルレングスで搭載。前作と比較して、エネルギーリターンが約15%向上しています。また、爪先部分にロッカーカーブを加え、推進力を感じやすい構造になりました。

「ペガサス 42も反発性がありながら、自分の脚で走れている感覚があって、これからジョグシューズとして使っていきたいと思っています。靴に走らされるのではなく自分のリズムで走りたいというか、ジョグをしているときに自分で接地して自分で蹴り出すことを意識したいので、厚過ぎるシューズではなく、ある程度薄くて反発性があるシューズが好みなんです」

「ペガサス 42」は最近のお気に入りシューズ

砂地を走って脚を作り、接地感を磨く

学法石川時代は、松田監督の方針もあり、基本的にはアスファルトを走らずに脚を作ってきたと言います。

「学法石川のジョグでは基本的に砂のトラックと、砂の混じったクロカンコースを使っているのですが、少し滑るので、いい接地をしなければ上手く走れないんです。そのいい接地を極めていくためにも、接地感のあるシューズで自分の感覚を確かめたいんです」

雨が降って砂地が使えないときはロードを走ることもあるそうですが、基本的には砂地でしかジョグはしないとのこと。市民ランナーも、もっと公園のクロカンコースや河川敷の砂地などを走る機会を増やしてもいいのかもしれません。

大切にしているのは接地感

「ナイキ ストリークフライ 2」もお気に入りの一足

トラックを使ったポイント練習は週に2回。そこでは、都大路の1区で日本人最高記録をマークした際にも履いていた「ナイキ ストリークフライ 2」が活躍するそうです。

「練習内容によってスパイクを履くこともありますが、ストリークフライ 2を履いてポイント練習を行うことが多かったです。自分はフォアフット接地だからか、ストリークフライ 2の構造が合っていて、しっかり乗り込める感覚があるんです。ロードを走っているときもスパイクでトラックを走っているときと近い感覚で走ることができて、接地感もよく、とてもいいシューズだと思います」

都大路で「ストリークフライ 2」を選んだ理由は、そのコースにもあると増子選手は言います。

「アップダウンが多いこともあって、特に上りのときに押し戻されたくないという気持ちがあり、できるだけ薄いシューズで自分の脚を使って進んでいきたいと思っていました。ストリークフライ 2は、その自分の考えにハマったシューズでした。ヴェイパーフライも候補にはあったのですが、足を入れたときの感覚が一番よかったのもあって、ストリークフライ 2で走ることにしました。ただ、ストリークフライ 2はスピードが出る分、脚への負担もあるので、大学駅伝で距離が延びたときには、もしかしたらシューズの選択を変えるかもしれません。そういったとき、ヴェイパーフライ、アルファフライといった選択肢があるのは自分の武器を増やせることになりますし、これからもいろいろと試していきたいなと思っています」

ロードのレース用シューズとして愛用している「ストリークフライ 2」

ランニングフォームはまだまだ進化の途中

「ストリークフライ 2」は、スパイクの「ドラゴンフライ エリート」とも感覚が似ているとのこと。

「ずっとドラゴンフライを履いていて、シーズンの終わりくらいにドラゴンフライ エリートを履き始めました。自分の真下で着地してしっかりと潰せたときの反発力がピカイチだと思うのですが、そこがストリークフライ2 と似ていて。ドラゴンフライ エリートからストリークフライ 2への移行っていうのは本当に楽にできました。大学でもトラックシーズンのレースでは、ドラゴンフライ エリートを履きたいと思っています」

ここまで話を聞いていると、増子選手は接地感を大事にして自分の走りに合うシューズを選んでいるのかなと思ったのですが、シューズに合わせることもするのだそうです。

「本当に感覚の話になってしまうんですけど、シューズのプレートの形状に自分の接地を合わせてみることを意識しています。なので、一回履いてみてそのときはダメだなと感じても、接地を修正してからそのシューズがいいなと思ったことは何回もありますし、ドラゴンフライ エリートもそうでした」

自分のやりたい接地を邪魔しない、自分の接地を活かせるシューズを選ぶ。それは大前提でありながら、シューズに合わせることもする。感覚を大事にしながらも、フレキシブルであることがうかがえます。そして、自分のフォームも現状を維持するのではなく、進化させていきたいと増子選手は話します。

「フォームに関しても課題はまだまだ残っていると思いますし、そこは伸び代でもあり、まだまだ強くなれるなっていう感覚はあります。自分のフォームで直したいと思っている部分があるのはいいことだと思っていて、少しずつ改善して理想に近づいていけたらと思います」

大学ではトラックで記録を出すことに挑戦していきたいそうです。

「日本人はロードでしか戦えないと思われている風潮もありますが、失敗をしてもいいから自分のしたいことをする、芯をぶらさずに走っていきたいと思っています。5000mで12分台、10000mで26分台を出すことを大学在学中の目標にしていきたいと思っています」

砂地を走ることでさまざまな神経を刺激

増子選手も話していたように、学法石川のジョグは砂のトラックかクロスカントリー。ロードを走らない理由はどこにあるのかを松田監督に尋ねました。

スピード重視のトレーニングで多くの選手を育ててきた松田和宏監督

「不整地を走ることで、いろいろな神経、筋肉が刺激されるというのはあるのかなと思います。それから砂は少し滑るので、自然と足でしっかりと地面を捉えて走ろうとします。それが、フォームに良い影響があるのかなと。オールウェザーのトラックやロードだと反発が強いので勝手に進んでいけてしまうんですけど、砂地だとなかなかそうはいきません」

スピード系のトレーニングが多く、自由度が高いのも学法石川の特徴です。

「スピード系のトレーニングが多くて、あまり長い距離は走らないですね。ポイント練習は週に2回。AからEチームに分かれていて、どのチームで走るのかはそれぞれに任せています。ジョグは各自ジョグで、私からペースや距離を指示することは基本的にありません。週間や月間の走行距離も管理していませんし、生徒たちに走行距離を計測しろとも言っていません。生徒たちの方からこうやりたいというのは言ってきてくれるので、そこで話をして決めていく感じですね。実業団の練習のやり方に近い形かもしれません。増子もそうですが、自分で考えられる子、自分の意見を言ってくる子が自然と伸びていくような環境なのかなと思います」

現状の練習のスタイルも絶対的なものではないと松田監督は言います。

「これは生徒たちにも伝えているのですが、常に新しいことにチャレンジしたいというか、他のチームがやってない練習で強くなりたいっていうのがあるんですよね。連覇を目指すことになる生徒たちにも、去年のことは忘れて別のやり方で強くなろうと言っています」

過去にとらわれない松田監督が率いる、学法石川の選手たちの活躍が楽しみですね!

この記事を書いた人
神津 文人
神津 文人
フリーライター
2013年にフリーライターとなって以来、健康とフィットネス、シューズのテクノロジーを中心に「Tarzan」「GIZMODO」「FashionTechNews」「Runners Pulse」などで執筆。『RUN.MEDIA』では、ブランドヒストリーやシューズの開発ヒストリー記事を担当。
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